仙台と名取の世を彩って
仙名彩世さんが、花組トップ娘役に内定した。
彼女の芸名や彼女の最終出身校を見る限り、2008年入団の94期の首席というのも納得している。
が、正直トップ娘役になるとはピンと来なかった。
彼女をちょっと気にし始めたのは、
2011年「ファントム」の新人公演で「カルロッタ」をやることになってから。
本役は花組のベテラン最年長娘役*1。ファントムの中で特に毒や癖が大きい役を優等生の彼女に割り振られたことからより彼女に興味を持つようになった。
彼女を生の劇場でみたのはいつだっけ。
最初は2012年の11月のバウホール公演「Victorian Jazz」。
一期下の下級生男役王子*2をたぶらかす女優さんやってた。
王子に気のある振りをしつつも、利用価値がないとわかれば豹変して捨てる。その割り切りを軽妙に演じ、まだ新人公演年代だけど、骨あるジェンヌさんだなあ。と思った。
で、2度目は2013年5月の「オーシャンズ11」。
彼女はショー司会者の後ろで歌う3人娘の一人。これはよく頑張ってたなーぐらいしか覚えてない。
3度目は2014年11月の「エリザベート」
演目を聞いてのっちさんは彼女にヴィンディッシュ嬢かマダム・ヴォルフを演じて欲しいと欲しいと固く願っていた。
娼館のボス、マダム・ヴォルフは歌唱力勝負、自称エリザベートとして病院に暮らすヴィンディッシュ嬢はそれに加えエリザベートと対峙できる演技力も必要となる。
「ヴィンディッシュ嬢 仙名彩世」
とあった瞬間これは見に行かねば、と心に決めた。
観劇。彼女はヴィンディッシュ嬢以外にもエリザベートの親戚やら市民やらを演じていたが、ヴィンディッシュ嬢としてエリザベートに対峙した姿はエリザベートを食っていた。
そして、最後の新人公演ではエリザベートを叩きのめす姑ゾフィー。これもカルロッタ同様本役はベテラン最年長娘役。本役はこれを最後に宝塚歌劇団をやめてしまう。
結局、トップ娘役の条件でもある新人公演のヒロインをやることなく彼女は新人公演の期間を終えた。
いいよ。彼女がトップになれなくても。この本役さんみたいに彼女はトップ娘役に絡んで印象に残る役をたくさん演じることができるならそれでいいよ。それからはそんな心境で彼女を見ることとなった。
そして、4度目は今年の全国ツアー『仮面のロマネスク/Melodia』仙台公演。
劇『仮面のロマネスク』では、主人公からことごとく玩具のように扱われ良心とともに崩壊し舞台から消えていく既婚女性、ショー『Melodia』では歌やダンスの柱、そして最後のパレードの先導役。地元だからだろうと思うくらい彼女は活躍していた。
終了後のご当地ジェンヌ紹介で客席の『ゆりな/ゆき*3』うちわが10個ぐらいはためいていたのを見てより思った。
だが、この後彼女の名前を宝塚歌劇団のお知らせで見たのは退団者のお知らせではなく、花組トップ娘役のお知らせだった。
え?ええ?えええ?新人公演ヒロインの件は?小劇場ヒロイン三回ぐらいやってるからいい?小劇場の時も癖あるパートナーと組んでたもんなあ。
で、今の花組トップ男役。本人はインタビューでは明るい少年のキャラクターだが、劇になると舞台に鬱積した闇を広げていく。その闇と向き合える娘役として彼女が選ばれたに違いない。
多分、短い期間だろう。
よーし、来年の花組の大劇場公演を楽しみしよう。